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母、還暦。

母、還暦。

by EtoKatagiri on 2021.3.5 Fri

「酒の失敗を繰り返して女は蝶になる」という言葉があります。私の言葉です。

今月、母がめでたく還暦を迎えます。

どんな時でも女であることを怠らない母。孫が“おばあちゃん”と呼ぶのを禁じ、“りっちゃん”で押し通す母。私の男友達に謎な人気を誇る母。何があっても大きな愛と母性で包んでくれる母。きっといくつになっても、この人を越えることはできないのだろうなぁと思います。

子供の頃「FBI捜査官になろうと思う」と真顔で打ち明けた私を笑い飛ばすことなく、「じゃあまずは英語を頑張らないとね」と真摯に答えてくれました。天然パーマの前髪が嫌で、こっそり自分で切って落ち武者ルックになった時にも、叱ることなく「二人だけの秘密にしようね」とヘアアレンジで隠してくれました。

そんな母とは、一緒にお酒を飲むようになってから、より関係が深くなった気がします。

二人でとある居酒屋に行った時、見知らぬサラリーマンが超絶に酔っぱらい、店内にいたたくさんの人や持ち物に向かって吐き散らしたことがありました。母は自分の髪に彼の吐瀉物をつけたまま、極妻のような剣幕で汚れた娘のバッグの大切さについて抗議し、何故か買った値段よりも高い金額のクリーニング代が私に舞い込みました。

酔い潰れた母を抱えて、二人でラブホテルに泊まったこともありました。翌朝「ここドコ!?」と叫ばれ、酔った女を無理やり持ち帰った男の気分を味わうことができました。

夜行フェリーに乗ってUSJに遊びに行った時には、二人で船内でベロベロになり、乗り合わせた大学生にナンパされている私の横で、母は別の高校生にナンパされていました。親子であることをひた隠しにしたあの旅を、今でもよく覚えています。

韓国料理屋でマッコリをガブ飲みし、華麗な千鳥足を披露してくれたこともありました。何とか連れ帰ってベッドに寝かせ、今にも吐きそうな寝顔を見つめながら髪を撫でた時、今まで育ててくれてありがとうと、嫁ぐ前夜のような気持ちになりました。

お母さん、還暦おめでとう。

どうか元気で長生きしてください。いつまでも可愛い人でいてください。また一緒に美味しいお酒をたくさん飲みましょう。

私の酒の失敗はここには書けないことばかりですが、これからもあなた以上に失敗を繰り返して、いつか立派な蝶になりたいと思います。

東京に住んでいた頃、「私と無料で話せるよ」と自分の顔を待ち受けにした定額制PHSをくれた母。彼女か。

Writer
片桐 絵都
片桐 絵都

ライター