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本音と建前
by EtoKatagiri on 2021.5.17 Mon
福岡にも3度目の緊急事態宣言が発令されましたね。えらいこっちゃです。コロナ禍で出会いの場が減ったという話をよく耳にしますが、マッチングアプリがこれだけ身近になった今、昔に比べると格段に効率は上がり、出会いの幅も広がったのではないかと思います。
かつての出会いの場の代表といえば“合コン”でした。最近はコロナの影響でリモート合コンをする猛者もいるみたいですが、SNSやアプリの台頭で母数自体が年々減っているんだとか。
合コンーそれは初対面の男女が建前だけの会話を繰り広げる非効率で不毛で苦痛な時間。お互いのことを知るために始めたはずのキャッチボールが、いかに綺麗に投げて受け取るかの方に重点が置かれるようになる矛盾。
しかしそんな合コンの場でも、若き日の私は、自分がどういう人間かをきちんと伝えねばという生真面目さに縛られていました。
昔よく困っていた質問ベスト3。
第3位
「どんな人がタイプ?」
できればこんな人がいいという点を挙げればキリがありません。「ドーナル・グリーソンです」などと言ったところで相手が喜ぶとは思えないし、ただ聞かれたから絞り出しただけなのに、お前の分際で何を言ってるんだと思われるのも不本意です。簡潔に伝えるにはどうしたらいいか、当時たどり着いたキラーフレーズが“硬派なスケベ”でした。真面目なんだけど色気もある人がいいなという私の考えをうまく表現したつもりが、ムッツリな変態に萌える女というイメージを持たれることがわかり、いつの間にか使わなくなりました。
第2位
「好きな食べ物は何?」
地球最後の日は冷奴か卵かけごはんでいい私の好物の話なぞ、広がりようがありません。これはいかんと、嫌いな食べ物で広げるべく羊の肉が苦手と言ってみると、「わかってないな~あの臭みがクセになるんだよ」「本当に美味しいラムを食べたことがないんじゃない?」「本場のジンギスカンを食べたら人生観変わるよ」などと、“俺が導いてやる欲”を謎に起こさせる食材らしく、だいたい面倒なやり取りに発展します。どんなにフレッシュだろうがスパイスで煮込まれていようが、私にとって羊は羊。「だってオッサンの××みたいな味するじゃないですか」と、自分が嫌う羊独特の風味をわかりやすく伝えるべく、私なりのユーモアで返すと、(あ、オッサンの××の味知ってるんだ…)という殿方の怪訝な顔で会話が締めくくられるのでした。
第1位
「休みの日は何してる?」
酒飲んで寝てるだけです。あとは息して壁見てるだけです。相手が酒好きならばまだ話は広がるものの、色恋的には結構アウトらしく、この質問に答えるためだけに何かを始めなければいけないのではないかと苦悩した時代もありました。そりゃたまには映画も観るし本も読むけれど、まだよく知らない人とその内容を共有したいとは思わない。キャンプやボルダリングと嘘でもつこうものなら、次の質問に怯えてコソ泥のようにトイレに逃げ込むしかないのです。試行錯誤を繰り返した末、今でも休日は昼からビールを飲んでいます。
あの頃の私は、いったい何を答えれば正解だったのでしょうか。ただ今振り返ってみると、そんな紆余曲折を経て自分という人間の輪郭がよりはっきりした側面もあるし、人生の1ページとしては必要だったのかなとも思います。
人との触れ合いが制限されている今だからこそ、ビジュアルやスペックでふるいにかけるマッチングアプリではなく、あえて非効率なキャッチボールを楽しむことで、意外と心で繋がれる相手に出会えるのかもしれません。
いやでもやっぱり、ストレッチのきいたスキニーパンツ履いてる男の球は受けたくも返したくもないな。