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FUKUOKA / JAPAN

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旅が好き。

旅が好き。

by MayuYasunaga on 2021.9.9 Thu

「旅行が好き」って人はたくさんいるけど、旅の流儀は人それぞれ。どこに行って何をするのか、それをどういうふうに決めるのかもその人の自由だ。私の場合は仕事でも旅(出張)をすることが多く、情報誌や旅行サイトなどの案件で、旅そのものが仕事になるケースもある。それで、この機会に、自分がどういうふうに旅をしているのかを見つめ直してみることにした。

1 移動したい。

「旅」なんていうと大げさになるが、そもそも「移動」が好きである。ある地点からある地点に物理的に体を動かす、ということ自体におもしろさを感じるから、移動時間もまったく退屈しない。本を読んだり音楽を聴いたり、仕事をしたりすることもあるが、たいていの場合は景色や音、人の動きなど、移動そのものを楽しむことが多い。1カ月間動かないと調子がわるいので、なるべく月に一度は県外に移動できるよう、計画を立てたり出張依頼が来るよう祈ったり(!)している。

博多港から五島・小値賀島へ向かうフェリー「太古」(2016年8月)

2 それで、乗り物が好き。

飛行機、新幹線、バス、電車、クルマ、船。何でもいい。乗り物に乗ること自体が旅の楽しみになる。飛行機や新幹線ではなるべく窓側に。西鉄バスなら、景色がよく見える運転席と逆側の最前席(タイヤの上)がお気に入り。クルマの中でもパソコンを開いて原稿を書くことがあるくらいで、バスや小型船でもあまり酔わないし、眠ろうと思えばたいていどこでも眠れる。そんなタフなからだをありがたく思う。

『GOETHE』10月号(発売中)の特集の取材では、鹿児島・隼人にある神造島へ。港と島の間の移動は小型船。おだやかな錦江湾ではイルカの群れと出会えることもある。宿泊したのはクルーザーの船室。朝目が覚めたら、清々しい海風と朝焼けが迎えてくれた。

クルーザーからの朝焼け

3 出張も旅。

土日・祝日でも仕事が入れば動くので、最近は旅行のために予定を空けることが少なくなった。代わりに、出張を旅行に変える。デスクワークはどこでもできるので、前日入り・後泊などを自分で追加して、そのまちを旅してみる。自分では選ばない旅先にも行けるので、なかなか新鮮な気持ちになれる。

◆例えば、今年初めの出張。

<1日目>
始発の新幹線で博多→三島(静岡)へ片道5時間半。その間に仕事。名古屋駅の乗り換え時に駅弁獲得。三島でホテルにチェックインし、荷物を置いてJRで熱海へ。MOA美術館を見て、市街地へ。源泉かけ流しの温泉に入り、地元のおばちゃんに途中までまちを案内してもらい、ラーメン・餃子の老舗「一番軒」へ。三島に戻る。

源泉100%かけ流しの「福島屋旅館」で立ち寄り湯

<2日目>
ディレクターと合流して老舗の和食店でランチミーティング。午後は取材。夕方、新幹線に乗る前に駅構内の回転すし店で握りを購入。コンビニでお酒を買い、新幹線の中で駿河湾の味覚を満喫。

屋号がかわいい駅弁の老舗「桃中軒」の鯛めし弁当

三島駅にある「沼津魚がし鮨」の握り

4 県内で小旅行。

市内から片道1時間ほどかければ、けっこういろんな場所に行ける。県外への移動が制限されるコロナ禍は、県内の魅力をあらためて見つめ直すきっかけになった。写真は、先月西鉄に乗って柳川に行った時のもの。「柳川御花」で鰻のせいろ蒸しをいただき(緊急事態宣言中につきノンアルコール!)、八女提灯の老舗「伊藤権次郎商店」の妖怪提灯を鑑賞する。日本庭園を背景に、はたまた趣ある洋館にぼうっと浮かぶ妖怪提灯は、見たことのない幻想的な雰囲気があった。福岡市内で仕事をすることが多いので、市外のことは案外知らない。

「柳川御花」でいただいたせいろ蒸し

「口裂け女」が描かれた八女提灯

5 情報収集 or ノープラン?

事前にしっかり計画を立てるのか、現地でのフィーリングを大事にするのか。これは人によってけっこうわかれるところ。私の場合は、旅が仕事になることもあるので、自分一人で決められる時は、情報誌やウェブ、インスタで可能な限りの情報を集めて効率的にまわる。でも他方では、知らない場所に飛び込むのも好きなので、ノープランでも楽しめる派。感覚を鍛えるために、たまにはあえて何も決めずに旅することにしている。旅先任せ、人任せで深夜の関空へGO。

6 食べもの中心。

その土地の特産品や名物をおさえるほかに、古くから営業する老舗にはなるべく足を運びたいので、事前にいろいろと情報を集める。食事は今となっては2軒ハシゴが限界だが、途中で和菓子・洋菓子・喫茶・パンなどの専門店をはさみ、できるだけ多くの店を見て商品を買えるよう目星をつける。新しい人気店にもアンテナを張る。そうすると、その土地の昔と今が次第にリアルに見えてくるのだ。

東京・浅草にある老舗「浅草 水口」

「浅草 水口」で食べたマグロの刺身

7 ホテル・旅館選びにも全力で。

建築が好きというところからホテルや旅館にも興味があり、つねにいろいろと情報を集めている。泊まる必要のない福岡でも、安く泊まれる日があればと思って定期的に価格をチェック。新しくオープンするホテルを追っていると、世の中のニーズや人々の嗜好の移り変わりがよくわかっておもしろい。

博多区にある「BUNSHODO HOTEL」は、「本でつながる」をコンセプトにしたミニマルなホテル。1階にある「TIMEZ ESPRESSO BAR &」は、春吉にあるエスプレッソスタンド/ギャラリー「TAG STÅ」がプロデュース。オープンしてすぐは手ごろな価格で宿泊できたので、3回も泊まった。

「BUNSHODO HOTEL」外観

コロナ禍での出張は、いいホテルに割安で泊まれることもある。去年の末、東京に行った時に泊まった築地のホテル「TSUKI」は、「日本通になるホテル」がコンセプト。ホテル内に人工温泉の貸切り大浴場があったり、インテリアに日本の工芸品や伝統色が使われていたりと、クリエイティブの視点でもおもしろい空間だった。

「TSUKI」の貸切り浴室。1時間ごとの予約制でゆったり入れる

ここまで書いて、けっこうなボリュームになったことに気づく。続きはまた次回。旅先での具体的なアクションプランについて書こうと思っています。

(つづく)


=====(以下、リンクです)

野母商船 フェリー「太古」(博多~五島)
http://www.nomo.co.jp/taiko/

MOA美術館
静岡県熱海市桃山町26-2
https://www.moaart.or.jp/

福島屋旅館
静岡県熱海市銀座町14-24

一番軒
静岡県熱海市銀座町1-19
https://tabelog.com/shizuoka/A2205/A220502/22004182/

桃中軒
http://www.tochuken.co.jp/

沼津魚がし鮨
https://www.uogashizushi.co.jp/

イベント「奇怪夜行」
https://ohana.co.jp/blogs/information/kikaiyako

柳川御花
福岡県柳川市新外町1
https://ohana.co.jp/

伊藤権次郎商店
福岡県八女市本町220番地(東古松)
http://chouchinya.jp/

食事処 酒肴 浅草 水口
http://asakusa-mizuguch.main.jp/

BUNSHODO HOTEL
福岡市博多区博多駅前2-12-13
https://ldhd.co.jp/bunshodo/

TSUKI
東京都中央区築地1-9-4
https://www.tsukihotel.com/

Writer
安永 真由

ライター / ディレクター