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面食いは身を滅ぼす
by EtoKatagiri on 2021.9.17 Fri
“面食いは身を滅ぼす”という説を、私は常々提唱してきました。彼氏が欲しいのになかなかできない女性の7割は面食い(片桐調べ)です。そして彼氏いない歴が長くなると「これだけ温存したんだから、顔の綺麗な男と付き合わないと気が済まない」と哀しい意地を張り始めます。さらに人生経験を重ねていくと「もうリスペクトできる男なんていないから、どうせ駄目な奴なら顔が綺麗じゃないと許せない」と哀しい悟りを開き始めます。しまいには「町田啓太が好き」などと言いながら、本気で町田啓太レベルと付き合おうとします。同じ女として気持ちはよくわかりますが、どこのオフィスに、誰の友達に、何のイベントに、町田啓太レベルがおりましょう。ま、仮にいたとしましょう。その町田啓太レベルが、数多いる女の中から自分を選んでくれる確率は何%ありましょう。美女と野獣カップルの逆が圧倒的に少ないことから考えても、その確率が低いのは明白です。ま、仮に運よく付き合えたとしましょう。しかし次は、自分より可愛い女が彼の周辺に現れるたび、心変わりに怯えなければなりません。なぜなら町田啓太レベルはモテるから。そして彼を選んだ理由が“顔”であるが故に、彼が恋愛をする際の価値基準も“顔”だとしか考えられなくなるからです。浮気する人ほど相手の浮気を疑う(片桐調べ)のと同じです。そんな疑心暗鬼の付き合いは長くは続かない上に、別れた暁には「町田啓太レベルと付き合えたんだから、次はもっと顔の綺麗な男じゃないと」と、再び壮大な彼氏探しの旅が始まるのです。
「彼氏とか結婚とか明確に目標があるならさ、顔はもう諦めて気立てのいいオッサンにしなよ。ラコステのポロシャツとか着たさ」なんて言おうものなら「そういう“普通”がいちばんいないの!てか実はそれ全然普通じゃないからね!レベル高いから!てか普通って何?誰基準!?は!?」とキレられるので、くだらないアドバイスをするのは厳禁です。大体いちいち言われなくても、そんなことはみんなわかっているのです。女は賢い生き物ですから。それでも、抗えない、譲れない。結局、女として生まれたプライドと理想に縛られながら、女として生きて朽ちていくしかないのです。そしてそれを承知の上で、彼女たちを照らす光になれないものかと、私も自説を提唱し続けるのです。
先日、近所の個人病院にて、新型コロナウイルスの2回目のワクチン接種を終えました。同じ時間に予約した4名と一緒に待合室の椅子に座って処置を受けたのですが、接種前に男性ドクターが副反応について懇切丁寧に説明してくれている中、私以外の4名は俯きがちで、本当に聞いてます?ってくらい薄~いリアクション。そりゃみなさま何かしら色々大変でしょうが、私たちの命を守るために日々働いてくれている医療従事者に対して、その態度はいかがなものでしょうか。他の4名の分も私が感謝を伝えなければと、ドクターの目を穴のあくほど見つめ、必要以上にブンブン頷き、フーフー鼻息を荒らげていたら、途中から彼は私の目だけを見て説明するようになり、いつしか待合室が2人だけの濃密な空間に。いざ接種が始まり順番がやってくると、ノースリーブの私の腕を熱く見つめ「力抜いて楽にしてくださいね」と甘く囁くではありませんか。打ち終わった後のテープの素早い貼りさばきと言ったらもう。15分の待機時間には、頬を赤らめながら打ったところをゴリゴリ押さえました。だって「青あざを作りたくないなら押さえてくださいね」なんて私の彼が言うもんだから。
あくまで余談ですが、ドクターはイケメンでした。健康的に焼けた素肌。白衣の上からでもわかるガッシリした体躯。普段はガリガリな男子がタイプの私ですが、こんな筋肉に抱かれたい夜もある。しかし当然、あくまで余談ですので、下心からブンブン頷いたわけではありません。
ちなみに1回目の接種は別の病院で、ほんのり汗ばんだワガママボディな男性ドクターが担当でした。その時も医療従事者への感謝の気持ちは同様にありました。そこは自信があります。しかし、でっぷり出た腹ではなく彼の目をきちんと見たか。ブンブン頷いたか。鼻息を荒らげたか。感謝を伝えることができたか。そこは正直、自信がありません。
そんな私の2回目の副反応は39℃の発熱。腕はパンパンに腫れ、頭痛と怠さで朦朧とし、丸1日ダウンする羽目になりました。やはり“面食いは身を滅ぼす”。みなさまもお気をつけください。