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クリスマス・イブ

クリスマス・イブ

by EtoKatagiri on 2021.11.22 Mon

もうすぐクリスマスですね。人間、都合の悪いことからは目を背けたくなるもので、子供の頃、サンタクロースからのプレゼントの包装紙に地元の玩具屋のロゴがびっしり入っていても、「サンタさん、あのレジに並んで買ってくれたんだなぁ」と思っていました。サンタクロースを盲信していた私は、“サンタさんに手紙を書く”というあの風習もナンセンスだと思っていて、サンタクロースほどの大物なら、いちいち手紙など書かずとも心の中を読んで欲しいものを届けてくれると思っていました。「サンタさんに欲しいもの言わないといけないから教えて?」と親に聞かれても頑なに口を閉ざしていたため、ダルい子供だと思われていたでしょう。そんなわけで小学4年生くらいまで平気でサンタクロースを信じていた私ですが、いよいよサンタ役に限界を感じたのでしょう、クリスマスが近づいたある日、母にいきなり「あんたもうサンタさん信じてないよね?」と聞かれ、もちろんゴリゴリに信じていたわけですが、咄嗟に「ああ、うん」とクールに返事をしたのでした。「サンタさんっていないんだ…恥ず…しかもお母さんにバラされるとか…恥ず…」と、大人の階段を一つ上らざるを得ないクリスマスとなりました。

そんな母はトイレ掃除が好きで、毎日せっせと掃除していたため、実家のトイレはいつもピカピカでした。「トイレを綺麗にする人には美人の子が生まれるんよ」と、あのヒット曲のような説を昔から吹き込まれていました。しかしあちらのトイレには女神様がいて、毎日綺麗にしていたら自分もべっぴんさんになれるという説でしたから、「いくら掃除しても全然べっぴんさんにならんやんけ!」と途中でトイレブラシを便器に投げつけることもできるのですが、こちらの神様は美人の子が生まれるという人生の3分の1ほどを費やす長期戦を要求してくるため、こんなにせっせと掃除している人の子供は自分なんだから鏡を見れば胡散臭さに気づけそうなものを、そこからは目を背け、どうせ生むなら美人がいいと、こまめに掃除する日々が続きました。おかげさまで、今では私もトイレ掃除が好きです。

今年の4月に免許を更新しました。今まで一度としていい感じの写真なんて撮れたことがないのですが、今回は異次元の酷さでした。あまりの衝撃に心がちぎれそうになり、免許なんてなかったことにしようと、無言でそっと財布の奥に封印し、それから最近まで取り出すことはありませんでした。先日身分証明が必要になり、半年以上ぶりに封印を解いたのですが、改めて見てみると山下達郎に激似でした。お母さん、あなたの神様は一体どういうつもりで私を生ませたのですか?

真実は時として残酷です。ヤケになって山下達郎の『クリスマス・イブ』を口ずさみながらトイレ掃除なんてした日には、心深く秘めた想いは叶うわけないし、頬を伝った涙が夜更け過ぎには雪へと変わるでしょう。穏やかに健やかに生きていくためには、やはり都合の悪いことからはなるべく目を背けるべきなのです。サンタクロースだってきっといるはず。全国の子供達、夢を捨てないで。