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ベネディクト・カンバーバッチ

ベネディクト・カンバーバッチ

by EtoKatagiri on 2022.1.9 Sun

明けましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しくお願いいたします。
恥ずかしながらお酒くらいしか趣味のない私ですので、無為に過ごすことがないよう、2022年は俳句でも始めようかなと思っています。では早速ここで一句。

今ならば まじでわかるよ その気持ち

ふとしたきっかけで苦手だと思っていたものの良さがわかると、反動でゴリゴリに好きになってしまうことがあります。昔、友人が「あの人なんか苦手」と言っていた男と酔った勢いで男女の仲になり、それはそれは燃え上がったことがありました。以来、初恋でもなかろうに、会うたびに反吐が出そうな惚気話を聞かされ、記念日のサプライズに命をかけ、シラフでペアルックを披露し、意味不明なタイミングで彼を想って涙を流し、毎回くだらないことで破局の危機を迎え、いいことなんて一つもない携帯チェックに明け暮れ、挙げ句の果てに「好きすぎて辛いから別れた」と言われた時には「こいつ馬鹿じゃねえのか?」と心底思ったものでした。でも今は、そう思った自分を心底恥じています。できるなら彼女に土下座して謝りたい。「わかるわかる」と夜通し話したい。それもこれも、ベネディクト・カンバーバッチが悪いのです。

ベネディクト・カンバーバッチはこれまで私の「なんか苦手」リストの上位にいましたが、先日『パワー・オブ・ザ・ドッグ』を観てその演技に痺れ、途端にエロい目で見るようになりました。今ではもう好きでしかありません。暇さえあればベネディクト・カンバーバッチのことを考えていますし、私だけのベネディクト・カンバーバッチにしたいから誰にも出演作を観てほしくないですし、エッグベネディクトですらエロい食べ物のように感じてしまいます。逆になぜ「なんか苦手」だったのか考えてみましたが、もはやわかりません。

私は元来イギリス人が好きです。イギリス英語の響きに萌えるからです。あと知的な人が好きです。すらりとした人が好きです。滋味深い声の人が好きです。美しい指の人が好きです。首のラインと顔の輪郭が一体化している人が好きです。そもそもベネディクト・カンバーバッチには私の好きな要素がみっちり詰まっているのです。よくよく考えてみると「なんか苦手」と言いながら他の作品もほぼ全て観ています。それでも「なんか苦手」リストに入れていたのはなぜか?

「好きすぎて辛いから別れた」。これだ…!好きになりすぎるのがわかっていたから、でも結ばれないこともわかっていたから、傷つかないよう「なんか苦手」という嘘の予防線を張っていたのです。ああ、人間の防衛本能たるや。しかしそんな私のなけなしの防御も、バンジョーをかき鳴らして義妹を虐めるベネディクト・カンバーバッチによって脆くも崩れ去ったのでした。こんなに苦しいなら好きになるんじゃなかった。こんな気持ち知りたくなかった。このままでは「好きすぎて辛いからベネディクト・カンバーバッチの作品は観ない」などとほざく日がやってくるかもしれません。

そういえば、その男と別れたあの子はどうなったんだっけ?そうそう、ノーマークだった同僚に想いを寄せられ、大して長く付き合いもせずサクッと結婚したんだった。報われない大恋愛の後になんだかよくわかんない人と電撃婚するという、適齢期女子あるあるを体現してくれたのでした。そうなのよね、他の何かで薄めないと辛くてやってらんないのよね。わかるわかる。私も俳句という新たな趣味を見出したことですし、これからは心に浮かんだ愛の句を一筆箋にしたため、四季折々のベネディクト・カンバーバッチのイラストを添えて、お世話になった人々に配り歩きながら、行き場のない熱を散らしたいと思います。

来世では 嫁にしてくれ ベネディクト