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セレクトした本がTSUTAYA BOOKSTORE 福岡空港に!

セレクトした本がTSUTAYA BOOKSTORE 福岡空港に!

by MayuYasunaga on 2022.2.8 Tue

2月1日(火)から、TSUTAYA BOOKSTORE 福岡空港に選書した本が並んでいます。会社のみんなでそれぞれ選んで120冊を「#チカラ文庫」と命名。出しゃばりな私は仕切り屋として権限を掌握し、40冊をセレクトしました。

選書のルールは以下のとおり。

◎空港内という立地を加味して、選書は文庫本のみ
◎「移動」や「旅」も意識する(ただし全冊でなくてもOK)
◎同一の作者を選ばない(他の選者との重複は、同一作品でなければOK)

「ライターがセレクトする文庫120冊」ということで、その得意な(はずの)筆力を生かして、それぞれの本にキャッチコピーと100文字ほどの推薦文も付けることに。40冊分をピックアップする必要がある私は、つまり40冊分の帯を書かなければいけないというわけで……。

コツコツとエクセル表に入力したコメントを、パワポでまたコツコツとコピペして、TSUTAYAさんに出力・カットしてもらい、こんな感じで届いた本に帯を巻く作業を。売り場の奥にある快適なラウンジで、コーヒーを飲みながら、仕事も進めつつ、快適な環境で帯を巻いていきました。疲れたら「オロナミンC」で元気出す!

前職では、天然石ブレスレットの受注から発送までを毎日こなしていたので、この手の単純作業は好きだしかなり得意。想定していた時間の6割ほどで作業が終わり、書店員さんにも帯を巻くスピードを褒めてもらいました(地味にうれしい)。

そうして、できあがった書棚がこちら。

3月末まで展開しているので、空港を利用したりお見送り・お迎えをしたり、用事がある方はぜひ覗いてみてください。1冊でも、何冊でも、手に取っていただけるとうれしく思います。ラウンジはかなり快適で眺望も抜群なので、気分転換にテレワークしてみるのもおすすめですよ。

それで、宣伝としてはこれで終わりなのですが、今回さまざまな理由で選書からあぶれたかわいそうな本たちがおりまして、どうしても紹介したいと思っておるのです。

候補から外れた主な理由はこちら。

◎文庫ではない……文庫になっていないマイナーな名著もたくさんあります。
◎絶版や在庫稀少などの理由で入手困難……意外と多いものです。
◎迷った結果、除外……全体のバランスを見ながらだったため、泣く泣く外した本も。

そのかわいそうな13冊を紹介します。下に進むほど、マニア度が増します(個人の感想)。


ちくま日本文学028 梶井基次郎

有名作家の作品集をシリーズ化した「ちくま日本文学」から、梶井基次郎。これは単純に、選書が終わった後で思い出した名作でした。読み返して驚いたのが『檸檬』。冒頭を読むとわかりますが、これ、完全にアル中のダメ人間がしでかしたいたずらやん……と、37歳になってようやく冷静に見つめることができました。書店の売り場にレモン置いてきちゃダメだよね……。福岡空港のTSUTAYAさんにそんな人いたら大変だもんね……。静かな狂気、梶井基次郎。大人になって読むと新しい視点で読めるものです。


象/レイモンド・カーヴァー、村上春樹訳

村上春樹の翻訳が好きで、学生時代からよく読んでいます。今回はマーク・ストランド『犬の人生』を優先したのと、ワイド版だったことから書棚入りできなかったこの本。さらに、チカラの代表の元木が短編集『Carver’s Dozen』を挙げていたので、私は安心してカーヴァーを外しました。

しかし、そこには載ってない作品があるんですよ、この中に。読んでほしいのは、中年男が早朝いきなり別れた妻の家を訪ねて言い合いをする「親密さ(原題:Intimacy)」、メキシコの煮込み料理を火にかけすぎたらすべてが変わってしまった「メヌード(原題:Menudo)」。特に「親密さ」は、胸をえぐるようなつらい対話ばかりなのに、2人の関係がなぜか愛おしく感じられ、ひたすら泣けてきます。


社交ダンスが終わった夜に/レイ・ブラッドベリ、伊藤典夫訳

多くのSF小説を残したアメリカの作家、レイ・ブラッドベリの短編集。装丁の美しさ、翻訳の妙が好きでぜひ書棚に入れたかったのですが、在庫稀少で諦めました。なかでも「心移し(原題:Heart Transport)という作品が秀逸で、何度も読み返しています。ホテルで逢引き中の中年の男女が、互いのパートナーのもとに戻れるようにと「願掛け」をしたら本当にそれが叶い、互いに別れる話。結末の裏を読み解くと、かなり泣けてきます。涙のベクトルは、前出の「親密さ」に似てるかも。ブラッドベリは恋愛小説家としても天才的だと知りました。


夢奇譚/アルトゥル・シュニッツラー、池田香代子訳

作家を見ても、タイトルを見ても、ピンとくる人はあまりいないでしょう。でも、これならわかるかな。巨匠・スタンリー・キューブリックの遺作となった、1999年公開の映画『アイズ・ワイド・シャット(原題:Eyes Wide Shut)』の原作、なんです。タイトルは英語の常套句 「(with) eyes wide open」(目を大きく開いて)をもじった言葉遊び。映画は当時、私生活でも夫婦だったトム・クルーズとニコール・キッドマンのダブル主演と、セクシャルなシーンが話題となりました。カバー絵のエゴン・シーレの素描もいい。


Plan de PARIS/L‘INDISPENSABLE

旅と言えば、地図。パリに行くとき必ず携帯していたのが、文庫本サイズのこのパリの地図でした。文庫本ではないのでセレクトからは除外。地図が好きなので、見ているだけで楽しめます。パリの書店にはだいたい地図の棚もあって、パリや地方、ヨーロッパ圏の地図が並んでいます。

一番見やすいと教えてもらったのがこのL‘INDISPENSABLE版。メトロのほかバスの表記もあり、カラー版なので見やすくまとめられています。


アイヌ神謡ユーカラ/篠原昌彦

アイヌ地方に伝わる神謡がつづられているワイド版文庫。アイヌ語は全然わかりませんが、カタカナで発音も表記されていて、その響きを想像するだけでおもしろいんですよね。

こうした神謡は世界中に残されていますが、描かれている世界にどこか通じる部分があり、そこにもまた興味を惹かれます。


旧約聖書 創世記

あえて入れるかどうか悩みに悩んで、結局やめておいた本です。旧約・新訳ともに聖書にちゃんとふれたのは大学に入ってから。ヨーロッパの歴史や文化を読み解くときには必ず通る道だと思います。当時から美術が好きだったので、宗教画などのモチーフを解釈するときにも役立ちます。数節ずつ読んだり、章ごとに読んだり、毎日少しずつ読むのもいいと思います。信仰心はそれぞれの信念に委ねるとして、最低限の教養ということで。


快楽の動詞/山田詠美

快楽にまつわる動詞をテーマに選び、言葉そのものを楽しく読ませてくれるカジュアルな比較言語学の入門書です。「イク」とか「I‘m coming」とかやらしい表現を、ユーモラスかつまじめに考えます。言語学や文法も出てくる学術的な内容も、作家の手にかかればこうなるのかと、その筆力に脱帽。しかし、こんなにまじめで下世話なおもしろい本が、絶版になっているなんて……。


セルフィッシュ/野見山暁治

100歳を越えた今でも現役を貫く孤高の洋画家、野見山暁治のテキスト入り画集。1990年に用美社という出版社から限定2500冊で販売されたようです。

私が見つけたのは、出張で訪れていた熊本で立ち寄った、創業140年の老舗「長崎次郎書店」。ふらっと寄って、何気なく見ていた棚で見つけました。古本扱いで、たしか800円くらいで購入したと思います。


ジプシー歌集/ロルカ、長谷川四郎訳

1900年代に生きたスペインの詩人、フェデリコ・ガルシア・ロルカの作品。Amazon Primeで観た『サクロモンテの丘~ロマの洞窟フラメンコ』で、ある踊り手が踊っていた歌が気に入って、調べてみると詩は『ジプシー歌集』から。ネットで本を探すも、マイナー過ぎて見つからず、ようやく見つけたのがこの古本でした。A5判変形で、初版は1973年。ロルカの原画・デッサンをもとに、装幀と本文レイアウトを担当したのは日本画家・池田満寿夫。好きな人は好き、というマニア本ですが、最近は本もCDもこんなのを探してばかりな気がします。

番外編。
文庫本がぴったり収まる取次用の段ボール箱に、ちょっと萌え。

ところでみなさん、最近、本読んでますか?


TSUTAYA BOOKSTORE 福岡空港
福岡市博多区下臼井767-1
福岡空港国内線ターミナルビル 3階
https://tsutaya.tsite.jp/store/lounge/detail/7430

Writer
安永 真由

ライター / ディレクター