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京都

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by MayuYasunaga on 2022.3.10 Thu

◆「末廣寿司」の蒸し寿司

春と冬のあいだにある3月。まだ風が冷たくて寒い日には、温かい食べものを食べたくなる。すると、最近いつも思い出して恋しくなる料理がある。ふたつきのあつあつの丼でやってくる、京都の中京区にある、「末廣寿司」の「蒸し寿司」(並1,760円)だ。

「器が熱いので気をつけてくださいね」と、女将さん。はやる気持ちをおさえてそっとふたを開け、かわいらしいちらし寿司が現れる瞬間の心の高ぶりと言ったら……。

ぎっしりと敷き詰められた玉子に、海老、麩、銀杏、椎茸、きくらげ、桜でんぶ。ご飯にはしを入れると、中からほくほくの焼き穴子が顔を出す。そのほくほくぶりといったら、ご飯か穴子かわからなくなるほどで、それがさらにクセになる。これが「蒸し寿司」か、とこの年になるまで知らなかったことを激しく悔やむ。

やさしい味わいで、はしを持つ手がとまらない。どれから食べようかと迷いながら、具を一品ずつかみしめる幸福感。食べ終わった頃には、からだが芯から温まっている。

◎末廣寿司
京都府京都市中京区寺町二条上ル要法寺前町711
※「蒸し寿司」の提供は11月~3月限定


◆京極スタンド

12時の開店すぐから酒飲みでたちまち満席。店内はざわざわガヤガヤ、煙草のけむりでもくもく。そんな昔ながらの数少ない酒場を求めて通ってしまう。

いわゆる「居酒屋」にあるメニューが中心で、奇をてらった感じはない。それでも、メニューのなかに「えん豆卵とじ」や「はも天ぷら」なんてのを見かけると、「ポテトサラダ」(400円)やら「かきフライ」(800円)なんてどこにでもあるメニューも、たちまち別のものに見えてくるから不思議だ。

テーブルで相席になり、正面には定食を食べる20代前後の若い男の子が3人。その後に50歳前後のご夫婦が1組。連れが合流するとのことで席を移動し、新たに40歳くらいのやんちゃそうなお兄さん2人組。壁側のカウンター席には常連らしき一人客もいて、慣れた感じでくつろいでいる。誰でもすんなり受け入れて、店の一部にしてしまう。そんなホールのお姉さんたちの包容力にすっかり酔わされて、気持ちの良い昼下がり。

◎京極スタンド
京都府京都市中京区新京極通四条上ル中之町546


◆喫茶ソワレ

かわいいもの。キラキラしたもの。甘いもの。女子が好きなすべての要素が詰まっている。でも、かわいいだけじゃないあやしさがそこにはあって……。それもそのはず。「ソワレ」に行くと、青白い光のおかげで女子がきれいに見えるらしい。

内装やインテリアはなんだかゴシック調。グラスやコースターに描かれた女の子は画家の東郷青児が描いたものだ。

昼と夜の交わる時間。かわいらしさときれいさの狭間。女の子と大人の女性のあいだ。そんな両面性を持つ店なのだろう。窓の向こうには先斗町。河原町のこの場所にあるのもなんだかたまらない。

ここ数年の喫茶店ブームで女子に人気のフロート系にするか、「ゼリーポンチ」にするか。タイミングがゆるすなら、アルコール入りの「ゼリーワイン」(800円)のほうがここの雰囲気に似合う気がした。

◎喫茶ソワレ
京都府京都市下京区西木屋町四条上ル真町95
http://www.soiree-kyoto.com/
Instagram @tea_room_soiree

Writer
安永 真由

ライター / ディレクター