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たまごの悩み

たまごの悩み

by MayuYasunaga on 2022.4.13 Wed

たまごを求めて

焼いてもよし、蒸してもよし。生でも炒めてもよし。ああ、たまごってのはなんておいしい食べ物なのかと、大人になってからしみじみと気がつくものだ。

「じゃあ、いちばん好きなたまご料理は?」とよく聞かれるんだけど、こんな難しい問題がありますか。ここは博多弁風に語尾を上げてもいいし、「いや、なかろうもん」と反語にしてもいいくらい。どれがいちばんだなんて、いじわるな質問はやめてくださいよ。

身近なお店で「たまご料理」と言えば、これまでコラムで紹介した中では天神の「新天町倶楽部」の「オムライス」、大名の「一膳めし青木堂」の「納豆オムレツ」を食べることが多い。

「新天町倶楽部」の「オムライス」

「一膳めし青木堂」の「納豆オムレツ」

最近覚えたのは、「飛うめ」の「玉子丼」。正方形のかわいいのりがのるだけのシンプルさが潔く、だしのうま味がしっかりと効いている。

「新三浦天神店」の「親子丼」も忘れてはいけない。

あっ、薬院の「ニュースマイル」の「たま弁」や「2こ玉スパ」も、たまご好きの定番メニューだ。

そうなれば、「ふきや」のマヨネーズも「ほぼたまご」と言っても過言ではない。

天神「ディーン・アンド・デルーカ」の「ふんわりオムレツ」もワインと合わせやすくてちょうどいいポーションなんです。

いつ、どこでも

福岡県外でも、気づいたら「たまご」を求めてしまってる私。旅先でもかなりの確率でたまごを求めてしまっていることに気づきました。

前回記事で紹介した京都「末廣寿司」の「蒸し寿司」も錦糸たまごがびっしり。

同じく、京都の「マルシン飯店」で「豚肉と玉子のピリ辛炒めセット」を平らげたこともあった。

熊本の「山本屋食堂」の親子丼はすごくユニークだ。

同じふわふわ蒸し系だと、ちょっと前に青山の「hotel’s」で食べたオムレツがヒットクリームソースとはちみつで仕上げていて、塩味と甘味が絶妙なバランスだったな。ペアリングで出してもらった台湾茶と味わうと、さらに味の奥行きが出てきて……。

歌舞伎座すぐの「喫茶You」のオムライスは、最高の定番!

変化球だと、「新橋末げん」の「かま定食」とか。鶏のひき肉と鳥だしスープをたまごでとじた料理だ。

古今東西、たまごのいろいろ

古今東西どんな地域の料理にも登場するのが、たまごのすごいところでもある。白金の「あ三五」さんで月に一度開いている「そば会」では、思わずたまごに出会えた。写真を見ただけじゃピンとこないかもしれないが、この黄色い蕎麦は「黄身切り」。つまり、たまごの黄味を練り込んだ蕎麦なのだ。江戸の人々は風情があるなと感心するばかりだった。

卵黄のみを使うと言えば、イタリアのローカルな料理を出してくれる姪浜の「anima」で食べた「タリヤン」もそうだった。

ちょっとマニアックなメニューだと、「目玉焼きのカラブリア風ウンドゥイヤのソース(カラブリア地方の唐辛子入り)」なんてのもあった。イメージとしてはポーチドエッグみたいな感じ。シンプルだけど、これは自分じゃ絶対に真似できないとろとろ具合。

「タリヤン」は警固の「タベルナ ティベリーナ」でも頼んでいた。

清川の「友諠商店」のフードコートに入ってる「台湾好吃」で食べたルーローハンのゆでたまごも、甘くほっこりとしたやさしい味わいだった。

「Mon an」の「青唐辛子のオムレツ」も、行くと必ず目に入ってしまう大好物。

夏は白金「ビストロFIG」の「エスニック茶わん蒸し」一択。この味はここでしか出会えないから。

たまごの大問題

大阪の「自由軒」の「名物カレー」もたまごがないと成立しないメニューである。ただ、ここで大きな問題に直面する。「いつたまごを崩すか」ということだ。

「名物カレー」の場合は最初に崩してぐるぐると混ぜて食べるのが正解なわけだが……。だとしてもなお、目の前に料理が来てから、いや、料理が運ばれる前から私を悩ませる、たいへん深刻な問題なのだ。

早すぎても遅すぎてもいけない。まわりとの調和を考慮して、料理を最大限に生かせるタイミングで崩すのが正解なわけだが……それはいったいいつなのか。答えは誰も教えてくれない。

「ちゃんぽん」みたいにトッピングで壁ができるときはまだいいけど、ラーメンみたいに汁(スープ)の割合が多い場合は、ほんとうに油断ならない。勢いよくつぶすと、たちまち黄身が汁に溶けだして、ちりぢりになってしまうから。

「丸幸ラーメンセンター」のラーメン+たまご

かろうじてチャーシューとねぎ、メンマに守られているが、熱々のスープに浮かぶたまごは思ったよりもか弱くてもろい。「ああ……」と思ってれんげを持ち出しても、時すでに遅し。

黄身がこわれてちりぢりになる様子を黙って見ながら、悔しくてやるせない私は「たまごがもったいない!」と自分の不手際を反省しながら、黄色いとんこつスープをすべて飲み干すしかなくなるのだった。愛しのたまごの面影を偲びながら。

Writer
安永 真由

ライター / ディレクター