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福岡・九州のガストロノミー事情|『GOETHE』取材

福岡・九州のガストロノミー事情|『GOETHE』取材

by MayuYasunaga on 2023.7.20 Thu

幻冬舎『GOETHE』8月号、記事を執筆しました

年に数回、気まぐれでやってくる『GOETHE』の取材。6月23日に発売となった8月号では、恒例の特集「レストラン大賞2023」で2軒のレストランの取材に行ってきました。

この特集、とにかく登場人物が豪華! 秋元康さん、小山薫堂さん、中田英寿さん、そして幻冬舎の代表取締役社長・見城徹さん。この4人がここ1年間に訪れて「号泣した」お店、全55店が紹介されています。

私が取材・撮影ディレクションを担当したのは、小山薫堂さんがおすすめする福岡の名店「GohGan」と、佐賀・伊万里にあるレストラン「kate cuore(カテクオーレ)」。どちらも巻頭で2ページ扱いにしてもらってよかったです。

しかし、取材に行ったもの本文など主な原稿は別のライターさんが担当しておりまして、私は現場に行ってシェフやお店の近況を聞きながら、おいしくお料理をいただいただけ、ということになります(汗)。

福岡を代表するガストロノミーレストラン「GohGan」(福岡市博多区住吉)

キャナルシティ博多そばに昨年新しくオープンした「010 BUILDING」1階にある「GohGan」。福岡・西中洲で営業していたフレンチ「Maison de la Nature Goh」の福山剛シェフと、タイ・バンコクで「Gaggan Anand」を営むガガン・アナンドシェフがコラボレーションしたレストランです。

このお店をおすすめしてくださったのは、小山薫堂さん。選者4人の協議の中で話に出ていたメニューをメインに数品を撮影しました。

「季節の鮮魚のセヴィーチェ」(1,760円)。この日の魚は大分産のシマアジ。福岡・糸島産の桜エビは軽く炙って。キュウリのピクルスとハスイモが添えられていました。キャロットスパイスソースには、ガガン氏が好きなユズも使われています。

「GohGanブリオッシュバーガー」(2,420円)。生でも味わるほど状態の良い黒毛和牛のザブトンを、手切り+ミンチにしてパティを作っています。この工程はすごく手間がかかるのですが、あえてそのレシピを選んでいるのだとか。こうした細部にこそ一流の技が光るというのが「GohGan」の考えなのです。

ソースは、赤いストロガノフソース+大分産の原木椎茸を使ったホワイトソースのあいがけ。濃厚なスモークチーズも絡んで食べ応えがあります。

スペシャリテのひとつ「スパイシークラブカレー」(3,960円)+「炊き立て白ごはん」(550円)。北海道産の生のズワイガニを使ったGohGan名物のココナッツカレー。テーブルいっぱいに強くフレッシュな香りが広がるのは、注文を受けて調理するから(お米も注文後に調理)。

スパイスの複雑な香り、上質な生のズワイガニの風味、青唐辛子のフレッシュさを感じることができる。カレーをのばす時にはズワイガニでとったダシも使用するなど、とにかく蟹のうまみを存分に味わえる一品です。

以前、プライベートでも行ったことがあったので、いくつかのメニューはすでに体験済でした。メニューは時期によって適宜入れ替えているそうです。

それまで食べたことなかったメニューで、この日いちばん感動したのが「傑作まんじゅう 博多Gohりもん」(1,430円)。これ、福岡のお土産として有名な博多西洋和菓子「博多通りもん」を、製造元の「明月堂」から直接仕入れ、前菜にアレンジしてるんです。

「博多通りもん」にフォアグラを挟み、上に乗るのはタマリンド、マイクロリーフ、福岡・能古島産のブラッドオレンジの果肉。ブラッドオレンジはビールも使い、さらに乾燥させてパウダーにしたものも散りばめられています。

まろやかなフォアグラと「博多通りもん」のあんが口の中で溶け合い、酸味と塩味がマジで絶妙! キレのいい上品なシャンパンに合うだろうなぁ。

知る人ぞ知る名店、佐賀・伊万里「kate cuore(カテクオーレ)」

九州の飲食店や食材、生産者にも精通した中田英寿さんが挙げたお店は、佐賀・伊万里にある「kate cuore(カテクオーレ)」。名前は聞いたことがあったのですが、取材が初めての訪問となりました。

国内外で料理人として働いていた湊さんは、「kate cuore(カテクオーレ)」をオープンする前の数年間、肥育農家として牛を育てていたというユニークな経歴の持ち主です。自らが(ご家族も含む)生産者として育てた牛を、自らの手で調理する。牛1頭の姿を知り尽くしているからこそ、その牛の味を生かすことができるんです(すごすぎる)。

さらに、食材のポテンシャルを最大限に生かすため、料理はすべて提供前に仕上げていきます。牛乳からリコッタ―チーズを作ったり、時間をかけてていねいに肉に火入れしたり。そうしてコースを楽しむと、入店から退店までの滞在時間は4、5時間に。

これを「長い」と感じるかどうかは、料理の受け手次第だと思います。コンビニやスーパーで手軽に食事が手に入る現代では、「すぐに食べられること」に価値が置かれることが多いように感じますが、本来の人間の営みを考えると、ひとつひとつの食材が口に入るまでには時間も手間もかかるのが当たり前です。

食事が神との対話の手段のひとつであるように、湊さんの料理は「食べる」という行為の尊さを思い出させてくれたように感じました。

料理については、多くは語るまい! 気になった人はぜひ食べに行ってみてください。

※取材時(2023年5月)の時点の情報です。最新の情報はホームページやSNSなどでご確認ください。

GohGan(ゴーガン)
福岡市博多区住吉1-4-17 010 BUILDING1階
instagram

kate cuore(カテクオーレ)
佐賀県伊万里市立花町3997-4
instagram

Writer
安永 真由

ライター / ディレクター