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「好き」の掛け合わせで生まれるごちそう。中華風家庭料理「ふーみん」

「好き」の掛け合わせで生まれるごちそう。中華風家庭料理「ふーみん」

by MayoGoto on 2024.6.6 Thu

今年の春、「福岡中洲大洋」が閉館しました。福岡の街から大切なものがどんどん失われていきます。建物老朽化の対策って、まちづくりとしてどうにかならないものなのかな。中洲大洋のクローズについて、先日「organ」のともこさんが、SNSに投稿していたのが心に残ったのでこちらにも。

さて、今回はKBCシネマで公開される大切なものを守るために動く人たちの姿に心惹かれる映画のお話です。

映画『キッチンから花束を』

ⒸEight Pictures
告知ポスターのメインビジュアル撮影は若木信吾さんによるもの。”優しい中華”と言われる中華風家庭料理「ふーみん」のママの微笑みがあたたかい。

東京・青山の骨董通り沿い「小原流会館」地下にある、連日長い行列ができる人気店を舞台とした映画『キッチンから花束を』。土地柄、クリエイターや文化人たちの食卓的存在として知られる「ふーみん」が、50年もの間、なぜ人々に愛され続けるのかを3年半にわたり追い続けた長編ドキュメンタリー作品です。

5/31から順次公開ということで、ひと足先に観た感想としては…私がイメージする東京の良いところ全部盛りという感じ。持続的に文化を育むまちの素晴らしさがぎゅっとつまっていて、あらためて東京っていいところだなあと思いました。

「ふーみん」はこれまで、渋谷の神宮前・キラー通り→南平台→骨董通り(現在)と場所を変えています。どの時においても魅力的な地域にあり、それぞれ面白そうな文化の薫る街中のビル内で営んでいて、そこには美味しそうで楽しげな料理はもちろん、手をかけ心をかけ育まれているその店らしさがあります。子どもも大人も、連れもお隣さんも関係なく、さまざまな人が自分の好きな料理をネタに対話していて、とても活気に満ちている。

こういうお店、福岡だとどこかな? と考えてみましたがなかなか浮かばず。たぶん近いところはあるんだと思うんですが、ここまで長くは続けられないんでしょうね。

店内の壁面を飾る、製作者・制作年不明の巨大なアート。お店に30年近く飾ってあるものだとか。ディスプレイひとつとっても、趣味性が強くてグッときます。

本編では、常連客である多くのクリエイターがインタビューに応じています。その登場人物に対し、必要最低限のキャプションとなっているので、この人は誰? と思う方も多くいらっしゃいましたが、それぞれ「ふーみん」のいいところを思う存分語っていて面白かった。とくに、平野レミさんが亡き夫の和田誠さんのアイデアが反映されたというねぎワンタンを語るシーンには込み上げてくるものがありました。

ねぎワンタンはすでにあったねぎそばを、和田さんが「ワンタンでやってみたら?」と言ったことから始まったメニューだそうで、「ふーみん」を語るうえで欠かせない人気のメニューです。そんな風に「ふーみん」のお店には、ママのアイデンティティである台湾料理にお客さんの「この料理、素材をこれに変えたりできる?」というアイデアが加わり、相乗効果で生まれたメニューがたくさん。開店当時の、新しいメニューが生まれる場に関わった人たちのエピソードはどれも見逃せません。

身長140cmの小さい体で大きな中華鍋を振るうふーみんママの姿。

生涯現役でいたいと話していたふーみんママですが、今は体力の限界ということで青山のお店にはおらず、神奈川で1日1組の「斉」という店を営んでいる。右側の男性がママの甥で現在の「ふーみん」のオーナーさん。

「お店でも頼んで家でも作る大好きなレシピ」と語り継がれるふーみんママの料理。映画の公式サイトには定番メニューのレシピコンテンツも。映画鑑賞前後で作ってみるというのもおすすめです。

みんなのきょうの料理のレシピも良いので、ぜひこの機会に。
https://www.kyounoryouri.jp/teacher/detail/88

コロナ禍で「おうちごはん」の楽しさはさることながら、「そとごはん」の楽しさ、豊かさを実感できたところで、とても感慨深い作品です。

Infomation

映画『キッチンから花束を』
6/14日[金] KBCシネマほか全国にて公開
https://kbc-cinema.com/
 
台湾人の両親をもち、日本で生まれ育った斉風瑞(さいふうみ)、通称・ふーみんママ。1971年、友人の一言から神宮前に小さな中華風家庭料理のお店「ふーみん」をオープン。父と母からもらった確かな味覚と温かな愛情。50年にわたって愛されつづける「ふーみん」のすべてがここに。
様々なメニューが生まれたストーリー、ふーみんママと料理の原点。数々の証言、日本と台湾、そして斉風瑞の家族に迫る長編ドキュメンタリー映画作品。
 
配給:ギグリーボックス 
公式 Instagram:
https://www.instagram.com/fumin_movie/